下山コースを間違え迷い込んだリゾートホテルの廃墟。
比較的明るい一階ロビーを通り抜け道路に出るつもりだったのに、私たち三人はいつのまにか地下の薄暗い廊下にうずくまっていた。
もともと何かを感じやすいサオリだけではなく、まるで鈍感な私やカナもこの地下全体に巣食う何者かの気配を感じるようになっていた。
「サオリ、あんたにはもう見えているの?」
うつむき震えながらうなずくサオリ。
「とにかくもう一度階段を探そう!」
私は他の二人の腕をつかまえて立ち上がらせた。
その時私のバッグがドアノブに強く当たった。
あたりに広がる薔薇の香り。
どうやら持っていたローズ・オーデの瓶が割れたようだ。
するとどうだろう。
下水の底のような淀んだ空気が軽くなり、香りが広がる方向へ闇も後退して行く。
やがて地上からの光が差し込む階段が見えてきた。
そういえば邪霊は良い香りを嫌うと母が言っていたのを思い出した。
私とカナは足取りのおぼつかないサオリに肩を貸しながら、一歩一歩階段を上り始めた。
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